TEM観察・分析、試料作製、利用料金に関するよくあるご質問(FAQ)

この記事について
本記事は、現場で感じた雑感や日頃寄せられるお問い合わせへの回答をAIがまとめた読み物です。参考にしていただければと思いますが、内容は制度として正式に確定しているものとは限りません。不明な点がございましたら、お気軽にお尋ねください。

このFAQでは、TEM観察・分析、TEM試料作製、セルフ利用、トレーニング、技術支援および装置利用料金について、当室でよくいただくご質問をまとめています。
記載する金額・日数は、定額料金や成果保証を示すものではなく、予算および利用方法を検討するための目安です。費用の目安は、学内利用、またはARIM課題(データ共有あり)で、学術目的かつ成果公開を前提とする利用を想定しています。これ以外の利用区分では適用される料金体系が異なる場合がありますので、正式な料金・利用条件は、利用時点の最新料金表・利用案内をご確認ください。

目次

  1. 利用料金の目安
    1. Q. TEM観察・分析には、1試料あたりどの程度の費用がかかりますか?
    2. Q. 利用料金に大きな幅があるのはなぜですか?
    3. Q. セルフ利用では、依頼利用より料金を抑えられますか?
    4. Q. 期待した観察・分析結果が得られなかった場合も料金は発生しますか?
  2. 集束イオンビーム(FIB)によるTEM試料作製
    1. Q. 依頼試料作製でFIBを標準的に用いるのはなぜですか?
    2. Q. FIBによるTEM試料作製にはどの程度の時間が必要ですか?
    3. Q. 高ビーム電流条件を用いてFIB加工時間を短縮できますか?
    4. Q. FIBの自動加工工程も技術支援時間に含まれますか?
  3. FIB以外のTEM試料作製法
    1. Q. 分散法はどのような試料に適していますか?
    2. Q. 粉砕法はどのような場合に有効ですか?
    3. Q. 電解研磨はどのような場合に有効ですか?
    4. Q. 電解研磨装置は、なぜ貸出利用を基本としているのですか?
    5. Q. Arイオンミリング法はどのような試料作製法ですか?
    6. Q. イオンミリングによる依頼試料作製は現在受け付けていますか?
    7. Q. イオンスライサはどのような試料作製に適していますか?
    8. Q. イオンスライサによる依頼試料作製は現在受け付けていますか?
    9. Q. FIB以外の試料作製法を一括した依頼サービスとして扱っていないのはなぜですか?
  4. セルフ利用、トレーニングおよびライセンス
    1. Q. なぜ当室はセルフ利用を基本としているのですか?
    2. Q. 基本操作トレーニングを受ければ、すぐに研究試料を単独で観察できますか?
    3. Q. ライセンス認定は何を認定するものですか?
    4. Q. JEM-2100plusのトレーニングはどのように進みますか?
    5. Q. 装置操作の習得と、研究に必要なデータ取得技能の習得は別ですか?
    6. Q. TEM観察・分析の習熟には、どの程度の経験が必要ですか?
    7. Q. 高頻度でTEMを利用する研究者では、習熟期間は短くなりますか?
    8. Q. 依頼観察・分析を利用するのは、どのような研究者ですか?
    9. Q. ライセンス取得後も自主トレーニングや継続利用が必要なのはなぜですか?
    10. Q. 操作ミスは装置にどの程度の影響を与える可能性がありますか?
  5. 観察・分析目的に応じた装置選択
    1. Q. 利用料金の低い装置から順に使用する方が、総費用を抑えられますか?
    2. Q. 観察条件が未確立の依頼試料では、JEM-ARM200Fでどのように観察を開始しますか?
    3. Q. すべての観察・分析をJEM-ARM200Fで行うのが最適ですか?
    4. Q. JEM-ARM200Fのセルフ利用には、どの程度の習熟が必要ですか?
  6. 観察・分析と研究上の判断
    1. Q. 複相試料では、観察・分析に要する時間が長くなりますか?
    2. Q. 技術的に適切に取得されたデータであれば、研究上の妥当性も保証されますか?
    3. Q. 通常の技術支援には、結果の学術的解釈も含まれますか?
  7. 装置利用料金、技術支援および共同研究
    1. Q. 大学の共用設備でも装置利用料が必要なのはなぜですか?
    2. Q. 施設によって装置利用料金が異なるのはなぜですか?
    3. Q. なぜ依頼利用には技術支援料が必要なのですか?
    4. Q. 共同研究として実施する場合、装置利用料や技術支援料は不要ですか?
  8. ARIM/CINTSによる共用支援と外部利用
    1. Q. 外部利用は学内利用枠にどのような影響を与えますか?
    2. Q. FIBの依頼利用は、共用設備の運営にどのように位置づけられていますか?
  9. 利用コストを抑えるための考え方
    1. Q. 利用コストを抑えるには、どのような方法がありますか?
    2. Q. 若手研究者向けの支援制度はありますか?
  10. 利用相談に必要な情報
    1. Q. 利用相談の際には、どのような情報が必要ですか?

利用料金の目安

Q. TEM観察・分析には、1試料あたりどの程度の費用がかかりますか?

TEM観察・分析に要する費用は、試料の状態、試料作製の要否、使用装置、観察・分析内容、セルフ利用か依頼利用かによって大きく異なります。

TEM試料を利用者側で作製済みで、経験者がセルフ利用する場合は、数千円〜数万円程度で実施できることがあります。

一方、加工条件が未確立の一般的なバルク試料について、TEM試料作製から観察・分析までを一括して依頼する場合は、当室では予算検討上の目安として、FIBによるTEM試料作製 約2.5日+JEM-ARM200Fによる観察・分析 約1日を想定しています。

学内利用、またはARIM課題(データ共有あり)で、学術目的かつ成果公開を前提とする利用では、初期の予算検討として1試料あたり20〜30万円台からを一つの目安としています。これは定額料金ではなく、必要な装置利用時間および技術支援時間に応じて増減します。

Q. 利用料金に大きな幅があるのはなぜですか?

TEM観察・分析の総費用は、TEM本体の装置利用時間だけでは決まりません。

試料採取・前処理、TEM試料作製、観察領域の探索、結晶方位の調整、像・電子回折データの取得、EDS・EELS等の分析、追加観察・追加加工など、目的とするデータを得るまでに複数の工程が必要です。

これらを利用者自身が行うセルフ利用では技術支援を必要な範囲に限定できますが、一括して依頼する場合は数日単位の専門作業となることがあります。

Q. セルフ利用では、依頼利用より料金を抑えられますか?

はい。利用者自身が装置操作、観察領域の選択、観察・分析条件の判断を行うことで、技術支援料を抑え、必要な装置利用時間に限定して実験できます。

また、試料を最もよく理解している研究者自身が観察中に判断できるため、特に観察対象や観察条件が未確立の試料では、費用面だけでなく研究上の意思決定の速さという点でも有利です。

ただし、セルフ利用には装置ごとの操作ライセンスに加え、研究目的に応じて適切な観察・分析条件を判断する技能が必要です。

Q. 期待した観察・分析結果が得られなかった場合も料金は発生しますか?

原則として発生します。

当室の装置利用料および技術支援料は成果報酬ではなく、実際に行った装置利用・技術支援に対して発生します。このため、期待した観察結果や分析結果が得られなかった場合でも、実施した作業に対する料金は原則として発生します。

加工条件や観察条件が未確立の試料では、利用者の負担する費用を有効に活用する観点からも、処理速度より試料作製・観察の成功率を優先して進めます。装置故障等、当室側に明確な原因がある場合は別途取り扱います。


集束イオンビーム(FIB)によるTEM試料作製

Q. 依頼試料作製でFIBを標準的に用いるのはなぜですか?

FIBは、特定位置からTEM試料を作製できる位置選択性と、SEM像で加工位置・加工状態を確認しながら薄膜化できることが大きな利点です。界面、析出物、欠陥等の目的領域を選択して加工でき、加工条件が未確立の試料でも作業工程を比較的標準化しやすいため、依頼試料作製に適しています。

電解研磨法やイオンミリング法等は、材料ごとの条件が研究室内で確立している場合には、FIBより低コストかつ効率的なことがあります。一方、条件が未確立の試料では、予備加工、加工条件の最適化、TEMによる電子線透過領域の確認、追加加工を繰り返す必要が生じ、所要時間を事前に見積もりにくくなります。

このため、イオンビーム照射による損傷が問題となる材料や、分散法が適するナノ粒子等を除き、当室では加工条件が未確立のバルク試料を依頼試料作製として扱う場合の標準的な手法としてFIBを用いています。

Q. FIBによるTEM試料作製にはどの程度の時間が必要ですか?

同種・類似試料について加工条件が十分に確立している場合は、1日程度で作製できることがあります。

一方、加工条件が未確立の学術研究試料では、イオン照射に対する試料の応答や加工損傷の程度を確認しながら工程を進める必要があります。当室では、加工条件が未確立の一般的な依頼試料について、平均2.5日程度を予算上の目安としています。

Q. 高ビーム電流条件を用いてFIB加工時間を短縮できますか?

粗加工工程に高ビーム電流条件を適用することで、加工時間を短縮できる場合があります。また、利用者から具体的な加工条件をご指定いただくことも可能です。

ただし、加工速度を優先しすぎると、目的領域の消失、イオン照射損傷、試料変形等のリスクが高くなる場合があります。指定条件で期待したTEM試料が得られなかった場合でも、実施した装置利用および技術支援に対する料金は発生します。

Q. FIBの自動加工工程も技術支援時間に含まれますか?

依頼利用では、原則としてFIBの装置使用時間と技術支援時間を同時間として計上しています。

自動加工工程であっても、加工状態の確認、進行状況の判断、異常時の対応、必要に応じた条件変更等が必要であり、担当者が当該作業から完全に離れて別業務へ移行できる時間ではないためです。技術支援料は、操作している瞬間だけではなく、依頼業務のために担当者の時間を確保しているかどうかを基準として考えます。

一方、セルフ利用者が通常は自ら操作し、特定の工程のみ技術支援を受ける場合には、実際に支援を行った時間のみを技術支援時間として計上するため、装置使用時間と技術支援時間は必ずしも一致しません。


FIB以外のTEM試料作製法

TEM試料作製法は、試料の形態、材質、観察目的、必要とする位置選択性・方位選択性等に応じて選択します。FIB以外にも、分散法、粉砕法、電解研磨法、Arイオンミリング法、イオンスライサによる試料作製等があります。

これらはFIBより技術的に劣る方法ではありません。特に、同一または類似した材料を継続的に扱い、研究室内に試料作製条件と経験が蓄積している場合には、FIBより低コストかつ効率的に良好なTEM試料を作製できることがあります。

Q. 分散法はどのような試料に適していますか?

ナノ粒子分散液や、溶媒中に分散可能な粉末試料では、支持膜付きTEMグリッドへ試料を直接担持する分散法が適用できます。

一般には、試料を適切な溶媒に分散し、必要に応じて超音波処理等で分散状態を調整した後、支持膜付きTEMグリッドへ滴下し、十分に乾燥させて観察します。直接費の中心はTEMグリッドと溶媒であり、TEM試料作製法の中では低コストな部類です。

粒径・形態、分散・凝集状態、結晶質/非晶質の判定、方位を限定しない高分解能観察等に適しています。一方、支持膜上に担持された粒子の位置や結晶方位は原則として選択できません。特定の晶帯軸、特定相、特定界面等を対象とする場合は、試料作製自体は低コストでも、観察領域の探索や結晶方位の調整に時間を要することがあります。

Q. 粉砕法はどのような場合に有効ですか?

バルク試料を機械的に粉砕し、電子線が透過可能な薄片や微粒子を支持膜付きTEMグリッドへ担持する方法です。専用の薄膜加工装置を必要としないため、材料と観察目的によっては簡便かつ低コストにTEM試料を準備できます。

一方、試料採取位置や結晶方位を指定することはできません。また、粉砕に伴う塑性変形、破砕、表面損傷等が観察結果へ影響する可能性があります。このため、バルク材料中の組織や界面を位置関係を保ったまま評価する用途には適さない場合があります。

Q. 電解研磨はどのような場合に有効ですか?

金属・合金等では、適切な電解液と研磨条件を設定することで、比較的広い電子線透過領域を得られる有効なTEM試料作製法です。同一または類似した材料系を継続的に扱う研究室では、電解液組成、印加電圧、温度、研磨終了条件等を確立することにより、多数の試料を効率よく作製できます。

一方、使用する電解液や研磨条件は材料系ごとに大きく異なり、条件が未確立の材料では、適切な条件を見いだす作業そのものに相応の検討が必要です。当室には、全材料へ共通して適用できる電解研磨条件が体系的に蓄積されているわけではありません。

Q. 電解研磨装置は、なぜ貸出利用を基本としているのですか?

当室の電解研磨装置は、閉鎖された所内研究室から移管された装置です。当室では移管以前に電解研磨を共用メニューとして運用していなかったため、材料系ごとの電解液・研磨条件に関する知見が、共用設備として体系的に蓄積されているわけではありません。

また、当室内には電解研磨を恒常的に実施するための局所排気設備(ドラフトチャンバー)や、使用薬品の保管・管理、廃液処理を集約して行うための専用環境を整備していません。

このため、現在は依頼試料作製としての一括支援を行わず、電解液、研磨条件および薬品管理に関する知見を有する研究室等への貸出利用を基本としています。

Q. Arイオンミリング法はどのような試料作製法ですか?

機械研磨等により予備薄化した試料へArイオンビームを照射し、電子線透過領域を形成する方法です。当室には、Gatan PIPS II(B)Fischione Model 1010等のイオンミリング装置があります。

酸化物、セラミックス、複合材料等のTEM試料作製に広く用いられ、材料ごとの加工条件が確立している場合には、FIBと比較して低い直接費で試料を作製できます。

一方、通常は装置へ導入する前に機械研磨等で試料を十分に薄くする予備加工が必要で、この工程にも材料に応じた技能が求められます。また、イオンエネルギー、入射角、冷却条件、加工終了条件等は材料に応じて設定する必要があります。

Q. イオンミリングによる依頼試料作製は現在受け付けていますか?

以前は、イオンミリングによる依頼試料作製を一括して支援していました。現在は担当技術職員が不在のため、依頼試料を継続的に受け入れる標準的な試料作製サービスとしては運用していません。

現在は、技術支援員が装置状態の維持および動作確認を目的として、必要に応じて運転することを中心としています。装置を使用可能な状態に維持することと、材料ごとの加工条件を判断しながら依頼試料作製を継続的に実施することは、必要な人的体制が異なります。

Q. イオンスライサはどのような試料作製に適していますか?

当室には、JEOL EM-09100IS イオンスライサがあります。比較的厚い試料からイオンビーム加工を開始できることが特徴で、特にバルク材料の断面TEM試料作製に適しています。

通常のイオンミリングより厚い状態から加工を開始できるため、機械研磨で薄く仕上げることが難しい脆性材料にも有効です。

また、同一または類似したバルク材料の断面試料を継続的に作製する研究室では、試料寸法、予備研磨、固定方法、イオン照射条件等を標準化しやすく、研究室単位で試料作製工程を定型化する用途に適しています。

Q. イオンスライサによる依頼試料作製は現在受け付けていますか?

イオンスライサについても、以前は依頼試料作製を一括して支援していましたが、現在は担当技術職員が不在のため、継続的な依頼試料作製には投入していません。

現在は、主として技術支援員が装置状態の維持および動作確認を目的として必要に応じて運転しています。

Q. FIB以外の試料作製法を一括した依頼サービスとして扱っていないのはなぜですか?

理由は試料作製法ごとに異なります。

  • 分散法・粉砕法: 研究目的と試料特性を理解している利用者側で試料を準備する方が、試料選択や条件調整を含めて効率的な場合が多い
  • 電解研磨法: 材料固有の電解液・研磨条件に加え、局所排気、薬品保管・管理、廃液処理を含む専用の運用環境が必要
  • イオンミリング法・イオンスライサ: 以前は依頼試料作製を実施していたが、現在は担当技術職員不在のため、標準的な依頼試料作製としての運用を休止している

このため、FIB以外の方法については、試料、観察目的、既知の加工条件、利用者側で実施可能な前処理等を確認した上で個別に検討します。


セルフ利用、トレーニングおよびライセンス

Q. なぜ当室はセルフ利用を基本としているのですか?

料金面だけが理由ではありません。

セルフ利用では、試料を最もよく理解している研究者自身が観察領域を選択し、得られた像、電子回折、分析結果に応じて、その場で次の観察・分析条件を判断できます。特に観察対象や観察条件が未確立の試料では、この研究上の判断が実験効率とデータの質に大きく影響します。

また、継続的に利用する研究室では、装置操作だけでなく、材料系に固有の試料作製・観察ノウハウを研究室内に蓄積できます。当室は、利用者が必要な技能を習得できる場合には、セルフ利用を基本としています。

Q. 基本操作トレーニングを受ければ、すぐに研究試料を単独で観察できますか?

装置の基本操作については、当室で標準化したトレーニングを実施しています。ただし、装置を安全に単独操作できることと、研究目的に対して適切な観察・分析データを取得できることは別の技能です。

基本操作トレーニングの修了後も、実際の研究試料を用いた観察経験が必要です。習熟に必要な期間は、利用頻度、反復回数、扱う材料系、観察・分析内容の難易度、取り組み方等によって大きく異なるため、「何回受講すれば十分」と一律には定められません。

Q. ライセンス認定は何を認定するものですか?

当室のライセンス制度は、共用装置を安全に、トラブルや故障を生じさせずに単独使用するための技能・知識を確認し、装置使用を許可するための制度です。

試料条件、試料ホルダの挿抜、真空系の扱い、電子線の照射、装置状態の確認、検出器の保護、異常時の対応等を確認します。

したがって、ライセンス認定は、材料系を問わず研究上適切な観察・分析を単独で実施できることまでを認定するものではありません。

Q. JEM-2100plusのトレーニングはどのように進みますか?

当室で実施してきた基礎〜初級トレーニングでは、概ね次の流れで進めます。

  1. 基礎1: 安全、設備、試料セット、ビームを出すまで
  2. 基礎2: 主にスクリーンで行う調整と視野探し
  3. 初級1: 初歩的なTEM観察とカメラによるデータ取得
  4. 初級2: 暗視野観察、NBD/CBD、初歩的なSTEM等
  5. 初級3: 必要な追加技能
  6. 自主トレーニング
  7. 初級ライセンス認定

内容は装置状態や講習時期によって変更されることがあります。単発の説明だけで認定するのではなく、実技・反復・自主操作を含めて、共用装置を一人で扱える状態にすることを目的としています。

Q. 装置操作の習得と、研究に必要なデータ取得技能の習得は別ですか?

はい。利用者が最終的に必要としているのは、装置操作そのものではなく、研究課題に必要なデータを取得し、その場で次の観察・分析方針を判断できることです。

基本操作は一定の手順として標準化できます。一方、実際の研究試料では、試料状態の評価、観察領域の選択、結晶方位の調整、撮像・回折・分析条件の設定、得られた結果に基づく追加観察の要否判断等が必要です。

これらは材料系と研究目的に強く依存するため、研究室ごとの材料系に特化した観察ノウハウまでを標準講習として提供することは、基本的には行っていません。

自身の研究試料を用いた立会観察や継続的なセルフ利用を通じて、材料固有の観察・分析経験を蓄積することが、実質的なデータ取得技能のトレーニングになります。

Q. TEM観察・分析の習熟には、どの程度の経験が必要ですか?

一律には定まりません。以下は正式なカリキュラムや到達保証ではなく、TEMを比較的高頻度で利用する研究室において、月2〜4回程度の利用を継続した場合に見られる典型例です。

経験段階の一例 技能・対応範囲の目安 経験年数の目安
学部4年程度 基本操作を習得し、指導下で基本的なTEM観察を行う 1年目
修士課程 自身の研究試料について、基本的なTEM観察を単独で行う 2〜3年目
博士課程 自身の研究試料について応用的な観察・分析を行い、研究グループ内の類似試料の基本観察にも対応する 4〜6年目
ポスドク等 共同研究先等から持ち込まれる類似材料系について、依頼観察・分析に対応する 7〜9年目
熟練利用者 自身の専門材料から離れた依頼試料についても、試料情報から観察・分析計画を組み立てて対応する 10〜15年程度

自身の研究試料を観察できることと、材料背景の異なる依頼試料へ対応できることの間には大きな差があります。自身の研究試料では、材料の履歴、予想される組織・相、観察すべき対象をあらかじめ把握しています。一方、依頼試料では、限られた事前情報から試料状態、観察領域、相、結晶方位、分析条件等を判断し、観察・分析計画を組み立てる必要があります。

Q. 高頻度でTEMを利用する研究者では、習熟期間は短くなりますか?

はい。利用頻度が高ければ、経験した材料系・観察手法についての習熟は大幅に速くなることがあります。

上記の経験年数は、月2〜4回程度の利用を継続するパワーユーザー研究室を想定した一例です。TEMそのものを主要な研究手段とし、週1〜2回以上の頻度で継続的に使用する装置開発・分析技術開発系の研究者では、経験量が大きいため、継続して扱う材料系・手法については、一般的な研究室の2倍以上の速度で習熟することもあります。

ただし、特定の材料系・観察手法に高頻度で習熟することと、材料背景の異なる依頼試料へ幅広く対応できることは別です。

Q. 依頼観察・分析を利用するのは、どのような研究者ですか?

装置開発・分析技術開発を主な研究テーマとし、TEMを高頻度で使用する研究者は、自ら観察・分析を行うことが多く、通常は依頼利用を中心とはしません。

依頼利用の中心となるのは、TEMを研究の主手段として常用するのではなく、研究課題の一部で必要となる情報を得るためにTEMを利用する研究者です。また、TEM試料作製・装置操作・観察技能を研究室内で維持せず、必要時に専門施設へ依頼する運用方針の研究室もあります。

単発の観察・分析や、研究室内で技能・設備を継続的に維持する負担が大きい場合には、依頼利用の方が総コストを抑えられることがあります。

Q. ライセンス取得後も自主トレーニングや継続利用が必要なのはなぜですか?

TEMは、高電圧・高真空系、精密な試料ステージ、試料ホルダ、高感度検出器等から構成される大型研究設備です。安全かつ安定して使用するためには、操作手順を記憶するだけでなく、装置状態の確認、試料・ホルダの適否判断、真空異常等への対応を反復して身につける必要があります。

また、一見小さな操作ミスでも装置停止や高額な修理につながることがあるため、ライセンス取得後も継続的な利用によって操作技能を維持することが重要です。

Q. 操作ミスは装置にどの程度の影響を与える可能性がありますか?

以下は、過去の当室講習資料で、操作ミスが装置へ与え得る影響の大きさを説明するために示した例です。現在の修理見積額や、利用者への請求額を示すものではありません。

装置への影響・過去資料の目安
ホルダ挿入・引抜き時の誤操作 真空不良、ベーク等で約1日のダウンタイム
EDS検出器の損傷 約300万円規模、復旧に数か月となる例
試料ホルダの変形 約100万円規模の例
試料着脱時の部品紛失・軽微なホルダ損傷 数万円〜数十万円規模の例
絞り汚染・真空系部品の損傷 数日以上のダウンタイム、約100万円規模の例
鏡筒内への試料落下 数日以上のダウンタイム、状態により数十万〜100万円規模の例
絞り損傷 数週間のダウンタイム、約50万円規模の例
カメラ検出器の焼き付き 検出器更新が極めて高額となり、500〜1,000万円規模となる可能性を示した例

実際の故障対応・費用負担は、原因や状況、適用される規程等に基づいて個別に取り扱います。


観察・分析目的に応じた装置選択

Q. 利用料金の低い装置から順に使用する方が、総費用を抑えられますか?

必ずしもそうではありません。

材料系とTEM観察に十分な経験があり、必要な観察手法が明確な場合は、目的に対して必要十分な装置を選択することで利用料金を抑えられます。

一方、観察対象や観察条件が未確立の依頼試料では、汎用TEMで予備観察した後にJEM-ARM200Fへ移行すると、装置を変更するたびに観察領域の再探索や条件調整が必要となる場合があります。このため、明確な理由がない場合には、JEM-ARM200Fを用いて低倍率から形態・組成情報を取得し、対象領域を絞り込む方法を標準的な進め方としています。

Q. 観察条件が未確立の依頼試料では、JEM-ARM200Fでどのように観察を開始しますか?

観察対象や観察条件が未確立の試料では、まず低倍率からHAADF-STEM像を取得し、必要に応じてSTEM-EDSマッピングを併用して、形態と組成の対応を確認します。

その結果を基に対象となる相・界面・析出物等を絞り込み、必要に応じて結晶方位を調整した上で、高分解能観察や追加分析へ進みます。

これは最初から高倍率観察を行うという意味ではなく、低倍率で試料全体の情報を整理した上で、観察領域を段階的に絞り込む進め方です。

Q. すべての観察・分析をJEM-ARM200Fで行うのが最適ですか?

JEM-ARM200Fで対応可能な観察・分析は多いものの、すべての実験に最適とは限りません。当室では、観察目的に応じて特性の異なるTEMを使い分けています。

  • JEM-2000EXII: 電子回折、明視野(BF)・暗視野(DF)観察、高傾斜を利用した結晶方位・方位関係の確認等
  • EM-002B: 磁性材料等、装置復旧性を重視する用途を含む特定目的のTEM観察
  • JEM-2100plus: 一般TEM観察、電子回折、高分解能TEM等に対応する汎用機で、利用者トレーニングの中心装置
  • JEM-ARM200F(S)/JEM-ARM200F(W): 収差補正STEMによるHAADF-STEM観察、EDS、EELS等を用いた高分解能観察・分析

必要な空間分解能、試料傾斜、電子回折、STEM・分光分析等を考慮して装置を選択します。

Q. JEM-ARM200Fのセルフ利用には、どの程度の習熟が必要ですか?

JEM-ARM200Fは収差補正STEMを中心とする高性能機であり、その性能を適切に利用するには、基本的なTEM操作に加えて相応の観察経験が必要です。また、装置構成が複雑で、高感度検出器等も含むため、共用設備としては操作上のリスク管理も重要です。

このため、一般的なTEM技能はJEM-2100plusで習得し、研究目的、必要とする観察・分析手法、利用頻度および習熟度を踏まえてJEM-ARM200Fのセルフ利用へ移行します。


観察・分析と研究上の判断

Q. 複相試料では、観察・分析に要する時間が長くなりますか?

長くなる傾向があります。

複相試料では、目的相を特定するために、形態、組成、電子回折等の情報を対応付けながら観察領域を探索する必要があります。同じ材料系を継続的に扱っている研究者であれば短時間で判断できる場合でも、材料背景や観察条件が未確立の依頼試料では、相の識別や代表領域の選定に時間を要します。

Q. 技術的に適切に取得されたデータであれば、研究上の妥当性も保証されますか?

保証されるものではありません。

装置が正常に動作し、適切な観察・分析条件でTEM像、STEM像、電子回折、EDS、EELS等のデータを取得できていることと、そのデータが試料全体を代表しているか、研究上重要な相・界面・領域を捉えているかを判断することは別です。

特に材料背景や観察対象が十分に共有されていない試料では、試料を最もよく理解している研究者本人が観察に関与することが重要です。

Q. 通常の技術支援には、結果の学術的解釈も含まれますか?

通常の技術支援では、TEM試料作製、装置操作、観察・分析条件の設定、像・電子回折・スペクトル等のデータ取得を中心に対応します。

一方、研究仮説の検討、取得データの研究上の妥当性判断、材料学的解釈、追加実験の設計、論文上の結論形成等まで継続的に関与する場合は、通常の依頼利用ではなく、共同研究として扱う方が適切です。


装置利用料金、技術支援および共同研究

Q. 大学の共用設備でも装置利用料が必要なのはなぜですか?

大型研究設備を継続的に利用可能な状態で維持するためには、保守・修理、電力、冷却水、空調等の維持・運転費が必要です。

当室の装置利用料金は、大学の貸付・料金算定基準に基づいて算定しています。概念的には、利用単価 ≒ 年間の維持・運転費 ÷ 算定上の利用時間という考え方になります。

当室では維持費の全額を装置利用料へ転嫁しているわけではなく、利益を上乗せすることを目的とした料金設定でもありません。詳細な算定根拠および収支については公開資料をご確認ください。

Q. 施設によって装置利用料金が異なるのはなぜですか?

装置利用料の算定方法と、維持費の負担構造が施設ごとに異なるためです。

組織共通経費で負担する維持費の割合、各種補助、料金算定に用いる年間利用時間、設備導入費の扱い等が異なれば、同種装置でも利用単価は異なります。

このため、時間単価のみを比較して料金設定の妥当性を判断することはできません。

Q. なぜ依頼利用には技術支援料が必要なのですか?

当室は、依頼分析のみを行う受託分析施設ではなく、セルフ利用を基本とする共用施設です。セルフ利用では、装置操作や観察・分析条件の判断を利用者自身が行うため、これらの作業に担当職員を継続的に拘束することはありません。一方、依頼試料作製や依頼観察・分析では、担当者が案件ごとに専門作業時間を確保する必要があります。

技術支援料は、概ね職員の時間当たり人件費を基礎として、依頼業務のために担当者を拘束する時間に相当する人件費を計上する考え方で設定しています。装置利用料が装置の維持・運転に関する費用であるのに対し、技術支援料は、セルフ利用では通常発生しない人的リソースの確保に対する費用です。

現在、当室には専任の技術職員が配置されておらず、教員も装置管理および共用環境の維持を優先する必要があります。この体制で依頼観察・分析を無償で恒常的に受け入れる場合、すべての案件へ対応することができず、公平な共用運用が困難になります。このため、依頼利用および技術支援は主としてCINTS/ARIMの支援枠組みで実施し、支援内容に応じた所定の技術支援料を設定しています。

Q. 共同研究として実施する場合、装置利用料や技術支援料は不要ですか?

原則として不要にはなりません。

共同研究は依頼分析の料金を回避するための制度ではなく、研究内容を共同で進めるための枠組みです。

共同研究の受入れは、研究内容、学術的意義、担当教員の専門性、研究・教育・装置管理業務との両立等を踏まえて個別に判断します。また、共同研究であっても装置利用料等は原則として発生します。

通常の依頼利用との主な違いは、装置操作やデータ取得だけでなく、研究計画、観察・分析方針、データ解析、結果の学術的解釈等に教員が共同研究者として関与する点です。


ARIM/CINTSによる共用支援と外部利用

Q. 外部利用は学内利用枠にどのような影響を与えますか?

外部利用にも装置稼働時間および技術支援時間が必要であり、共用設備の有限な利用枠を使用します。一方、当室の共用体制を評価する際に、外部利用による装置占有時間だけを切り離して考えることは適切ではありません。

当室の主要設備には、ARIMおよびその前身事業等のプロジェクトにより整備された装置が含まれます。また、ARIM/CINTSの事業スタッフが技術支援を担っており、装置利用料・技術支援料による事業収入も、結果として共用設備全体の安定的な維持・運営に寄与しています。

したがって、外部利用の影響を検討する際には、現在の設備・人員・財源を維持したまま外部利用のみを除いた状態ではなく、ARIM/CINTSによる設備整備、人員配置および財源上の支援がない場合との比較が必要です。

当室では、設備整備財源および収支に関する情報を公開しています。詳細については公開資料をご参照ください。

Q. FIBの依頼利用は、共用設備の運営にどのように位置づけられていますか?

FIBによるTEM試料作製は、1件あたりの装置占有時間が比較的長く、依頼利用の割合も高い業務です。依頼利用では、原則として装置使用時間と技術支援時間を同時間として計上するため、装置利用料と技術支援料の双方が発生します。

したがって、FIBの依頼利用は装置稼働時間と人的リソースを使用する一方、その事業収入は共用設備全体の安定的な維持・運営にも寄与しています。


利用コストを抑えるための考え方

Q. 利用コストを抑えるには、どのような方法がありますか?

利用コストを抑える上で重要なのは、装置の時間単価だけを比較することではなく、目的とするデータを得るまでに必要な試料作製、装置利用、技術支援の総量を減らすことです。

  1. セルフ利用を活用する: 利用者自身が観察領域の選択や観察・分析条件を判断できれば、技術支援を必要な範囲に限定できます。
  2. 試料作製条件を研究室内に蓄積する: 同一または類似した材料を継続的に扱う場合は、分散、機械研磨、電解研磨、イオンミリング等の条件を再現可能な手順として蓄積することが有効です。
  3. 観察・分析目的を明確にする: 「どの界面の何を確認したいか」「どの相の組成を確認したいか」等、研究上の問いを具体化すると、観察領域の探索や不要な分析を減らせます。
  4. 同一材料系の経験を蓄積する: FIB加工条件、観察条件、対象領域の特徴等が蓄積されると、試行錯誤を減らせます。
  5. 目的に必要十分な装置・分析手法を選択する: 材料系と観察方法をよく理解している場合は、JEM-2100plus等で目的を達成できることがあります。
  6. 複数試料は段階的に処理する: まず代表試料で試料作製・観察条件を確認し、その結果を基に残りの試料を処理すると効率的です。
  7. 利用可能な支援制度を確認する: 対象となる場合は、学内の共用設備利用支援制度等を利用できます。

利用コストを抑える上で最も効果が大きいのは、研究室側で実施できる工程を増やし、共用設備では必要な試料作製・観察・分析に集中することです。
当室では、料金面だけでなく研究上の判断の迅速化や技能・ノウハウの蓄積という観点からも、可能な範囲でセルフ利用を基本としています。

Q. 若手研究者向けの支援制度はありますか?

東北大学には、若手研究者等を対象とした共用設備利用支援制度があります。

制度内容は変更されることがあるため、このFAQでは支援率・上限等の詳細を固定して記載しません。利用時点の最新情報をご確認ください。


利用相談に必要な情報

Q. 利用相談の際には、どのような情報が必要ですか?

次の情報があると、TEM試料作製法、使用装置、セルフ利用・立会支援・依頼利用の組み合わせを検討しやすくなります。

  • 研究上、何を明らかにしたいか
  • 試料の材質、形状、寸法、試料状態
  • 観察対象とする位置、相、界面等
  • 取り扱い上の注意事項や電子線・イオンビーム照射に関する既知の制約
  • 研究室側で実施可能な試料作製・観察工程
  • TEM利用経験の有無と利用頻度
  • 既知の加工条件、過去の観察結果、希望する分析手法等

使用すべき装置名や分析手法が決まっていなくても問題ありません。まず研究上の目的と試料情報をお知らせください。

費用の考え方をより詳しく解説した「TEM分析にはいくらかかる?―TEM試料作製・観察・分析にかかる費用と利用方法」もあわせてご覧ください。

※この投稿はAIエージェントによって作成されています。